私たちがインターネット回線としてEthernetを利用するようになって久しいですが、自動車の車載通信においても、高速、大容量の通信のためにEthernetの技術導入が求められるようになりました。自動車では、Ethernetの枯れた技術を取り込みながらも、車載に求められるリアルタイム性、安全性、低コスト化などに対応するべく、独自の進化を続けています。
特に物理層においては、一般的なEthernet回線で使用される8線シールドツイストペアケーブルではなく、Ethernet配線の重量やコストを抑えるために2線非シールドツイストペアケーブルを使用するOABR(OPEN Alliance BroadR-Reach)規格が標準となっています。これは、IEEE802.3bwとして標準化され、100Mbpsの全二重通信を可能とすることから、100BASE-T1と呼ばれています。
AUTOSARでは、このOABRを前提にAUTOSAR Ethernet仕様を策定しており、車載Ethernetは、AUTOSAR BSWを使用して通信を実現することが標準的なECU実装方法になります。
サニー技研、主な開発実績
- AUTOSAR CP仕様Ethernet通信スタック開発
- BSWベンダー製モジュールコンフィグ、組込み実装、評価
- 自動車メーカー通信仕様対応評価検証
- 車載Ethernet規格適合試験
- TC10対応PHYドライバ開発
車載Ethernet通信の品質向上
現在、一部の自動車で車載Ethernetが導入され始めています。高精度地図データの伝送路やOTAに対応したADAS系ECU、LiDARとの通信に車載Ethernetを適用し、大容量、高速通信に対応したネットワークが構築されていますが、まだ限定された一部のローカルネットワークに留まっています。しかし、今後、車載ネットワークアーキテクチャがドメイン型、ゾーン型へ変遷するに伴い、車載Ethernetの適用範囲も拡大することが見込まれています。
サニー技研では、車載通信ソフトウェア開発のエキスパートとして、車載Ethernetにも早くから取り組んでいます。JASPARにおける車載Ethernet規定への参画の他、ゲートウェイECU用にEthernetドライバやEthernetゲートウェイソフトウェアの開発。また、AUTOSAR Classic Platform仕様のEthernetプロトコルスタックの開発実績があります。その他、Etherentプロトコルスタックを開発するだけでなく、Etherentプロトコルスタックを搭載したECUに対して、車載Ethernet規格適合試験を行っています。
一方、車載Ethernetは、民生産業のEthernet技術をベースとしながらも、自動車要件に合わせて物理層やドライバレベルで異なる進化をしています。1000BASE-T1や10BASE-T1Sの他にも、車載Ethernetの低消費電力を実現するためにスリープ・ウェイクアップ機能(OPEN Alliance TC10)など、技術発展と検証を繰り返しながら実用化を目指している段階です。
サニー技研でも、先行開発や要素研究用途でのSOME/IPやE2Eの組込み、OPEN Allianceが定めたスリープ・ウェイクアップ仕様のTC10対応PHY向けにEthernetプロトコルスタックを試作開発するなど、車載Ethernet技術の確立に貢献できるよう努めています。